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東京地方裁判所 平成10(ワ)14106 知的財産裁判例

平成一〇年(ワ)第一四一〇六号 損害賠償等請求事件

(口頭弁論終結日 平成一一年六月二三日)

判 決

原 告 株式会社麻布台出版社

右代表者代表取締役 【A】

原 告 【B】こと【C】

右両名訴訟代理人弁護士 園田小次郎

被 告 株式会社講談社

右代表者代表取締役 【D】

右訴訟代理人弁護士 的場 徹

同 佐藤高章

同 福崎真也

主 文

一 原告らの請求をいずれも棄却する。

二 訴訟費用は被告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第一 請求

一 被告は、原告株式会社麻布台出版社に対し、金三〇〇万円及びこれに対する平

成一〇年七月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二 被告は、原告【C】に対し、金五〇万円及びこれに対する平成一〇年七月四日

から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三 被告は、原告【C】に対し、被告発行の週刊現代に別紙(一)記載の謝罪広告

を別紙(二)記載の掲載方法で一回掲載せよ。

第二 事案の概要

本件は、タレント【E】を撮影した写真四枚(以下「本件写真」という。)につ

いて著作権又は著作者人格権を有する原告らが、被告に対し、本件写真を被告発行

の週刊誌「週刊現代」に無断で掲載した被告の行為が、右権利を侵害すると主張し

て、損害賠償の支払と謝罪広告の掲載を請求した事案である。

一 前提となる事実(証拠を示した事実を除き、当事者間に争いはない。)

1 当事者

原告株式会社麻布台出版社(以下「原告麻布台出版社」という。)は、月刊誌

「ポポロ」を発行する会社である。

原告【C】(以下「原告【C】」という。)は、「【B】」という名で活動する

写真家である。

被告は、週刊誌「週刊現代」などを発行する会社である。

2 著作権者

原告【C】は、タレント【E】を被写体として撮影し、本件写真を著作した。原

告麻布台出版社は、原告【C】から、右著作権の譲渡を受けた。なお、本件写真

は、月刊誌「ポポロ」平成七年六月号に掲載するために撮影した。

3 被告の行為

被告は、原告らに無断で、原告【C】の氏名を示すことなく、週刊現代平成一〇

年四月一一日号に、本件写真を掲載した。被告の右行為は、原告【C】の著作者人

格権(氏名表示権)及び原告麻布台出版社の著作権(複製権)を侵害する。

4 謝罪広告の掲載と損害金の供託

被告は、右著作権侵害の事実を認め、平成一〇年六月一日発売号(六月一三日

号)の週刊現代の誌上に、原告【C】の著作権を侵害した事実を認めて謝罪する趣

旨の謝罪広告を掲載した。また、被告は、平成一一年二月一八日、原告【C】及び

同麻布台出版社のため、和解金として、金三〇万円を東京法務局に供託した(平成

一〇年度金第九一一一九号)。

二 争点

1 損害額はいくらか。

(原告らの主張)

被告の著作者人格権侵害行為による原告【C】の損害は、金五〇万円が相当であ

る。

また、被告の著作権侵害行為により、原告麻布台出版社は、【E】が所属する株

式会社ジャニーズ事務所との信頼関係を害されたこと、同事務所から【E】の関連

した仕事がもらえなくなったこと等を考慮すると、その損害は、弁護士費用を含め

て金四〇〇万円の損害を被った(同原告は右損害の内三〇〇万円を請求する。)。

仮に、原告麻布台出版社の損害の算定につき、被告主張の方法によるとしても、

著作権使用料割合については三〇パーセントとするべきである。なお、週刊現代の

発行部数及び定価は認める。

(被告の反論)

損害額については争う。

著作権侵害に基づく原告麻布台出版社の損害額は、発行部数に定価(本体価

格)、全体の中に占める当該使用記述割合、著作権使用料を順に乗じて算定した額

によるべきであり、週刊現代の発行部数を八〇万部、定価(本体価格)二八六円、

総頁数二一四頁、本件写真の使用料の割合を一〇パーセントとして計算すると、そ

の額は四二万七六六四円となる。

八〇万部×二八六円×〇・一×(四頁÷二一四頁)=四二万七六六四円

2 原告らと被告との間で、本件著作権侵害についての和解契約が成立したか。

(被告の主張)

被告は、原告らから、著作権侵害の指摘を受けた直後より、本件写真の誌上掲載

が原告らの著作権を侵害することを認め、これを前提にして、紛争解決に向けて、

被告を代理する的場徹弁護士(以下「的場弁護士」という。)が、原告らを代理す

る江口英彦弁護士(以下「江口弁護士」という。)と折衝した結果、平成一〇年五

月一八日、被告は、週刊現代に謝罪文を掲載し、三〇万円の慰謝料を支払い、原告

らはその余の請求を放棄するとの内容の和解契約を締結した。このように、原告ら

と被告との間で本件和解契約が成立し、原告らの被告に対する請求権は消滅した。

なお、被告は、右和解契約に基づき、平成一〇年六月一三日号の週刊現代に謝罪広

告を掲載し、平成一一年二月一八日付けで和解金三〇万円を供託した。

(原告らの反論)

被告主張の事実は否認する。江口弁護士は、本件紛争解決のために原告らを代理

したことはなく、原告らと被告との間で本件和解契約は成立していない。

3 被告の損害賠償義務は供託により消滅したか。

(被告の主張)

被告は、平成一一年六月一〇日、原告ら代理人である園田小次郎弁護士に対

し、本件著作権侵害による損害賠償金及び遅延損害金を弁済提供したが、その受領

が拒絶されたので、平成一一年六月二三日、東京法務局に、損害賠償金及び遅延損

害金として、原告【C】のために三一万八〇〇〇円、原告麻布台出版社のために一

〇六万円供託した(なお、被告は、前記第二、一4記載の、平成一一年二月一八日

付けで供託した和解金三〇万円については取り戻した。)。同額はいずれも、本件

著作権侵害による損害金を十分に上回る額であるから、被告の本件損害賠償義務は

消滅している。

(原告らの反論)

被告の主張は争う。

4 謝罪広告は認められるか。

(原告らの主張)

被告の行為により、原告【C】は著作者人格権(氏名表示権)を侵害されたの

で、名誉回復のための措置として謝罪広告の掲載を求める。

(被告の反論)

原告らの主張は争う。

第三 争点に対する判断

一 争点1(損害額)について

1 原告麻布台出版社の損害

原告麻布台出版社は、被告に対し、本件写真について通常受けるべき使用料相当

額を、自己の受けた損害として請求することができる。そこで、右使用料相当額に

ついて検討すると、週刊現代の販売額は二億四〇〇〇万円であること(発行部数は

八〇万部、定価は三〇〇円として算定)、総頁数は二一四頁であり、他方本件写真

の掲載頁数は四頁であること、本件写真は、人気タレントである【E】を撮影した

写真であり、当時かなりの話題性を有していたこと(いずれも争いはない。)等一

切の事情を考慮すると、本件写真の使用料相当額は八〇万円と解するのが相当であ

る。また、被告の行為と相当因果関係を肯定できる弁護士費用を八万円の範囲で認

めることができる。

そうすると、被告の賠償すべき原告麻布台出版社の損害額は、八八万円となる。

なお、原告麻布台出版社は、被告が本件写真を掲載した後、タレントの所属事務

所との信頼関係を害され、慰藉料の損害が生じた旨主張するが、本件全証拠によっ

ても、そのような具体的損害を認めることはできない。

2 原告【C】の損害

著作者人格権を侵害されたことによって原告【C】に生じた精神的損害の額は、

掲載の態様、本件紛争の経緯、既に謝罪広告が誌上掲載されたことなど一切の事情

を考慮すると三〇万円が相当である。

二 争点2(和解契約の成否)について

1 前記第二、一4の事実、証拠(甲四、五、乙一ないし三)及び弁論の全趣旨に

よれば、以下のとおりの事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

平成一〇年四月ころ、的場弁護士は、被告から本件著作権紛争の解決のための委

任を受け、被告を代理して、原告らと交渉を進めた。ところで、原告らを実質的に

代理して、原告らのために交渉を担当したのは、江口弁護士であった。的場弁護士

は、江口弁護士から、同弁護士は、被告の関連企業である訴外株式会社光文社と関

係があることから、あくまでも事実上、原告らを代理して交渉をする旨の説明を受

けた。

平成一〇年五月一三日、的場弁護士は、江口弁護士と電話で交渉し、同弁護士

は、本件紛争の解決案として、週刊現代誌上に謝罪文を掲載すること、損害賠償金

として五〇万円を支払うことを提案した。その後、的場弁護士は、江口弁護士に対

し、謝罪広告文を掲載するか、賠償金の支払のいずれかの範囲で応ずると回答した

ところ、江口弁護士は、謝罪広告が掲載されるなら、賠償金は三〇万円でよい旨再

提案をした。的場弁護士は被告と検討した上、江口弁護士に対し、右提案に応じる

と返答し、あわせて、謝罪広告用の文案を同弁護士に送信した。右返答に対して、

江口弁護士が特に異論を唱えたり、意見を表明したりするなどの具体的な対応はな

かった。なお、原告ら及び被告間で和解契約書が作成されたことはなかった。

的場弁護士は、江口弁護士の右態度から、本件紛争は右内容で解決したものと判

断し、被告担当者に、返答に沿った被告の義務の履行を指示した。

ところが、的場弁護士は、同年五月二六日、江口弁護士から、【E】所属の株式

会社ジャニーズ事務所が反対したため、本件紛争を和解で解決きない旨の説明を受

けた。

謝罪広告文については、的場弁護士の指示に沿って、六月一日発行の週刊現代

(六月一三日号)に掲載された。また、被告は、平成一一年二月一八日、本件賠償

金として、金三〇万円を東京法務局に供託した。

2 右認定した事実を総合すると、江口弁護士が原告らを代理し、的場弁護士が被

告を代理して、本件紛争の解決に向けた交渉は重ねられたものの、双方の弁護士の

間で、被告は、週刊現代に謝罪文を掲載し、三〇万円の慰謝料を支払い、原告らは

その余の請求を放棄するとの内容で合意したと認めることはできない。

三 争点3(供託)について

証拠(乙四の一、二)及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおりの事実が認めら

れ、これに反する証拠はない。

被告は、平成一一年六月一〇日ころ、本件著作権侵害による損害賠償金及び遅延

損害金を原告らに弁済提供したが、原告らがその受領を拒絶したので、平成一一年

六月二三日、東京法務局に、損害賠償金及び遅延損害金として、原告麻布台出版社

のために一〇六万円、原告【C】のために三一万八〇〇〇円を、それぞれ供託した

(平成一一年度金第三四六三〇号・同第三四六三一号)。

被告が原告麻布台出版社に対して賠償すべき金額は九二万二七九四円(損害額八

八万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成一〇年七月四日から右供託

の日である平成一一年六月二三日までの三五五日分の年五分の割合の遅延損害金四

万二七九四円の合計)であり、また、被告が原告【C】に対して賠償すべき金額は

三一万四五八九円(損害額三〇万円及びこれに対する三五五日分の年五分の割合の

遅延損害金一万四五八九円の合計)であり、被告が供託した額は、いずれも、右金

額を超えるので、被告の本件損害賠償義務は右供託により消滅した。

原告らの本件損害賠償請求は理由がない。

四 争点4(謝罪広告)について

前記認定した経緯を総合すると、本件において、被告に対し謝罪広告等の措置を

命ずる必要性はないというべきである。

五 よって、主文のとおり判決する。なお、訴訟費用については、本件訴訟の経過

に照らし、被告に負担を命ずるのが相当である。

東京地方裁判所民事第二九部

裁 判 長 裁 判 官 飯 村 敏 明

裁 判 官 沖 中 康 人

裁 判 官 石 村 智

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